あらすじ・内容紹介
『線形代数学の最高施設』(全9編)は、平面に描いた一本の矢印から出発し、行列・行列式・線形空間・線形写像・内積・固有値・標準形・テンソル、そして群の表現までを、「線形性」という一本の糸で織り上げた建造物です。本書は、その建造物を自分の手で歩くための問題集ーー本編の章立て・節立てをそのままたどり、各節の急所を一問ずつ結晶させた158問からなります。
読むことと、解けることは違います。本編を通読して「わかった」と感じても、いざ白紙を前にすると手が止まるーーこれは誰もが通る道です。定理の証明を目で追えることと、その定理を道具として使いこなせることのあいだには、深い川が流れています。その川に橋を架けるのが、本書の158問です。ベクトルの幾何から、掃き出し法という計算技術、交代多重線形性が生む行列式、座標からの解放としての線形空間、線形写像と次元定理、内積空間と正射影、固有値と対角化、ジョルダン標準形という標準化の極北、そして双線形形式・テンソル代数・群の表現まで。各問題は本編を開かずとも読み通せるよう自己完結させ、他書で線形代数を学んだ方の腕試しにも使えるようにしました。本編と並走して解くのはもちろん、本編を読み終えた方の総仕上げにも使えるよう設計しています。
本書が込めたのは「答えの出し方」だけではありません。その問題を見たとき、最初に何を思うべきかーーこの一手が、解けるかどうかを分けます。各問の«定石»が最初の一手を一行で掲げ、【発想の道筋】が「なぜその一手を思いつけるのか」を、うまくいかない道も含めて語ります。捨てた道を知ることが、選ぶ力になります。【解答】はそのまま答案として通用する形を二段組で示し、右列の欄外注が行間で起きている代数変形を一段ずつ開きます。
なぜ線形代数は、これほど遠くまで届くのか。「線形性」が、複雑な世界を理解するための最も基本的な近似だからです。158問を歩き終えたあなたの手には、あらゆる数理科学への確かな土台が残っているはずです。その上に、あなた自身の数学を築いてください。