あらすじ・内容紹介
1920年代に登場して日本の探偵小説界を牽引するとともに、いまなお広汎な読者を獲得し続けている江戸川乱歩は、膨大な自筆資料を残している。
本特集では、乱歩がその作家的生涯を克明に記録し、自作への批評はもとより新聞・雑誌記事の情報まで貼り込んだ自筆スクラップ帖『貼雑年譜』(全9巻)、自作の草稿・下書き・構想メモ・読書ノートなどを収めた「文反古」に関する分析を試みるとともに、デビュー前の1913年から戦時中まで断続的に書き継がれた日記の内容を初公開する。
若かりし日の苦悩と試行錯誤、小説のアイディアを作品として完成させるまでの過程をたどる草稿研究、途中で頓挫してしまった構想や企画を浮き彫りにする試みなどを通して、活字化された作品を読むだけでは見えてこない作家・江戸川乱歩ワールドの舞台裏を探る。
序論 乱歩の自筆資料について 石川巧
江戸川乱歩日記資料群の概要 杉本佳奈
江戸川乱歩は早稲田大学で何を学んだのか? 石川巧
幻の雑誌「浅草芸術」--江戸川乱歩『大正八年 当用日記』から 吉田恵理
谷崎潤一郎とドストエフスキーを仰ぎ見てーー窮乏の日々と文学への憧れ 影山亮
大正十一年の江戸川乱歩日記における小説草稿について 鈴木優作
ぐるりと旋回する日記帳ーー大正末期の乱歩日記に見る生活・文芸・未遂の企画 米山大樹
幻の「月長石」序文ーー占領期日本への航海 浜田雄介
探偵小説をめぐる並走ーー江戸川乱歩日記に見る横溝正史との交流 山口直孝
日記を読むという経験ーー翻刻作業の現場から 松田祥平
【研究機関紹介】立教大学旧江戸川乱歩邸(江戸川乱歩記念大衆文化研究センター) 杉本佳奈
【連載】第十回 松朋堂新収古書解題 佐藤道生
【特別寄稿】『九相図』の業平ーー新出『九相図絵巻』をめぐって 今西祐一郎
【自著を語る】貸本問屋と貸本文化ーー娯楽的書籍の出版・流通・受容 松永瑠成