あらすじ・内容紹介
かつて留学先の天津で手にした斉白石の印譜を前に、漠然と篆刻芸術への憧れを抱いた著者が、のちに日本で活躍する現代篆刻家・馬景泉氏との出会いをきっかけに研究を開始。約10年を費やした意欲作。本書は、著者が篆刻における疑問を解決するために手にした参考書の中で、最も感銘を受け信頼を置く韓天衡氏(書画篆刻家・西泠印社名誉社長)の著書『印篆裏的中国』に依拠し、さまざまな角度から中国伝統の篆刻芸術を紹介することを主旨としている。
【本書の主な構成】
前半:篆刻芸術を理解するための基礎知識
篆刻の歴史や知識をはじめ、手本として重んじられてきた「漢印」、篆刻芸術の醍醐味である「遊印」、主要書体や篆刻の技法などを網羅。日本の印聖・高芙蓉、模刻の真髄と漢印の真価を語った松丸東魚にも焦点を当てる。
後半:「見る・触れる・使う」から迫る篆刻の愉しみ
印石、印面や印影の鑑賞、紫砂茶壺の印影、神聖な力を秘めた古代の印章などを取り上げる。なかでも新たな試みとして「個性が光る側款芸術」に注目し、丁敬、趙之琛、トウ石如、黄易、呉譲之、銭松、趙之謙、黄士陵、呉昌碩、斉白石といった名家の作品を紹介。側款からは作者の個性に加え、作品への思い、作者の人柄、印をめぐる文人たちの交友関係などもうかがえる。またいくつかのテーマにおいて、韓天衡氏に加え李剛田氏(書法篆刻家・西泠印社副社長)の『李剛田書印自説』より珠玉の論説も抜粋・要約して掲載。本書の不足を補うとともに、読者が一流人の講義を受けている気分に浸れるような構成とした。
余録/巻末:
本書誕生の契機となった馬景泉氏の仕事場への取材記事をもとに、ひとつの作品が完成するまでの記録を臨場感あふれる一人称形式で掲載。巻末には「篆刻を知るための基本用語」も収録した充実の一冊。