あらすじ・内容紹介
「なぜ音楽を勉強するの?」--児童生徒からのこの問いに、あなたは毅然と答えられるでしょうか。
本書は、これから教壇に立つ学生や初任者の音楽科教員に向けて、学校教育に音楽科が存在する本質的な意味を、日々の実践に即して説き明かした一冊です。
音楽は多くの生徒にとって身近な「趣味」です。だからこそ好き嫌いで授業への態度が決まってしまいがちですが、授業はあくまで「学習」。好みに合わない曲であっても、確かな変容……学力をもたらさなければなりません。著者はまず、授業づくりで混同されやすい「学習内容(目的)」と「学習活動(手段)」を区別することの重要性を説きます。発声練習もパート練習も、それ自体が目的ではないのです。
教科書の楽曲は、そのままでは教材ではありません。教師が「この曲で何を教えるか」を定めた瞬間に、はじめて教材となる。〈共通事項〉を視点に自らの耳で音や音楽の特質を見抜く教材研究の方法を、『夏の思い出』を例に、学習内容の創出から学習活動、評価の設定まで具体的にたどります。
さらに、テストで測れる「見えやすい学力」に偏らず、豊かな情操や感受といった「見えづらい学力」をどう育てるか。鑑賞指導が「言葉探し」に陥ることを防ぐ〈キャッチコピーの生成〉という提案。学級担任、校務分掌、給食や清掃、音楽室の管理、部活動…… 音楽科教員として生きることの全体像も丁寧に描かれます。
そして「あとがきにかえて」で語られるのは、ICT・AI時代における音楽科の使命です。「AIと同じ土俵に立つつもりはない」。労力と時間をかけ、苦悩とささやかな達成感を行き来しながら音楽と向き合うーーその実感の積み重ねこそが、音楽と共に生きる明るく豊かな人生を支えます。
教師としての誇りと情熱を呼び覚ます、実践的な羅針盤となる一冊です。