あらすじ・内容紹介
摂食症者の5人に1人は過去に自殺未遂をしたことがあるという。
それぞれの「生きづらさ」を「うまく食べられない」生き方で表現せざるを得ない摂食症患者たちのこころの空隙に,治療者はどう働きかけていけばよいのだろうか。
本書は,著者が2012年から2024年にかけて発表してきた,長年の臨床経験と精神病理学的洞察に基づく摂食症関連論文を一冊にまとめたものである。
総論では,摂食症特有の生きづらさと孤独を理解する鍵として「母なるもの」の回復という視点を提示する。第1部ではアディクション・トラウマ・解離との関連から摂食症を検討し,第2部では臨床場面に即して〈時間〉と〈身体〉の観点からその病理を読み解く。第3部では精神病理学的理解をさらに深め,第4部では過食の病理とそのメカニズム,治療的アプローチを検討する。
続く第5部では,摂食症治療の全体像を概観したうえで,治療のコツや一般精神科病棟で入院治療を行う際の留意点を解説。第6部では心理療法に焦点を当て,診立ての要点から一般外来での工夫,そして「治療を終える」ことへの著者の気づきを述べる。最後の第7部では,再び摂食症患者の生きづらさに立ち返り,患者がいかに社会とつながり,回復へと歩み出していくのかを展望する。
摂食症という病の深層に迫り,現場で日々患者と向き合う臨床家にとって重要な示唆を与える一冊である。
はじめに
総説
第1章 摂食症(ディソレクシア)という病ーー“うまく食べられない”生き方
1 摂食症とアディクション・トラウマ・解離
第2章 子どもの摂食障害とアディクション
第3章 トラウマ、解離と摂食障害
第4章 摂食障害を嗜癖と見なすことの臨床的意義
第5章 摂食障害における嗜癖の精神生理学的メカニズム
2 一般臨床の中の摂食症
第6章 身体の時間を取り戻すーートラウマ、解離、自傷、摂食症
第7章 「心身病理学」の可能性
コラム1 身体を生きる
3 摂食症の精神病理
第8章 摂食障害の診断概念ーー現場でいかに応用するか
第9章 摂食障害患者の人格について
第10章 摂食障害患者の精神病理学的特徴
第11章 摂食障害の精神病理学的理解を日常臨床に活かす
第12章 臨床的印象からみた摂食障害の精神病理
4 過食の病理
第13章 過食の病理とメカニズム
第14章 過食性障害/むちゃ食い症について
コラム2 心を撫でる
5 摂食症の治療
第15章 摂食障害治療の見取り図
第16章 摂食障害治療の難しさーーよりよい工夫のために
第17章 摂食障害を診るコツーー標準的な知識と技能
第18章 一般精神科病棟で行える入院治療
6 摂食症の精神療法
第19章 摂食障害に対し、さまざまな心理的治療をどう選択するか
第20章 摂食障害の精神療法ーー診立てのコツと一般外来での工夫
第21章 神経性過食症の「治療を終える」
コラム3 「うまくやれる」
7 リハビリテーションとソーシャルサポート
第22章 摂食症のリハビリテーションとソーシャルサポート
第23章 地域に生きる摂食障害者へのアプローチーー「自覚的現象学」の試み
おわりに