あらすじ・内容紹介
材料科学(マテリアルサイエンス)は本質的に実験科学であり,取り扱う事象が複雑で既存の数学に乗りきらないことから数学からやや遠くに位置していると思われがちである.しかし各事象の背後には物理的に明快な素過程があり,それぞれの素過程は物理学の法則に則り,記述する数学も明確である.だが,素過程が集まり事象や現象を発現するときには,素過程の中で支配的なものが選択され,また往々にして各素過程の集まり以上のプラスαが現れる.この選択則やプラスαの正体を明らかにし,数学の下で系統化することが「材料数理学」の命題となる.
本書は分野をリードしてきた著者がこれに答えるべく書き下ろした一書である.
第1章 原子配列の確率論
第2章 有限温度下における離散格子上の原子配列
第3章 相平衡と安定性
第4章 拡散と時間発展方程式
第5章 マルチスケール相平衡・相転移
第6章 材料強度の発現
第1章 原子配列の確率論
1.1 クラスター濃度と独立変数
1.2 相関関数
1.3 クラスター展開と配列空間
1.4 多元系のクラスター展開
1.5 完全直交基底
1.6 クラスター展開と離散フーリエ変換
第2章 有限温度下における離散格子上の原子配列
2.1 クラスター変分法
2.2 Bragg–Williams 近似とBethe 近似
2.3 クラスターの大きさ
2.4 エントロピー公式とBarker の方法
2.5 自由エネルギーと平衡状態
第3章 相平衡と安定性
3.1 熱力学関数とLegendre 変換
3.2 熱力学関数と斉次関数
3.3 Maxwell の関係式とthermodynamic mnemonic diagram
3.4 Jacobian
3.5 熱力学的安定性
3.6 離散格子の配列安定性
第4章 拡散と時間発展方程式
4.1 非一様系の時間発展
4.2 エントロピー生成速度
4.3 エントロピー生成速度と拡散
4.3.1 エントロピー生成速度と独立な流束
4.3.2 拡散流束とGalilei 変換(Galilean transformation)
4.3.3 多元系の相互拡散と拡散方程式
4.3.4 2元系の相互拡散
4.3.5 固有拡散と相互拡散
4.3.6 理想溶体と同位体の拡散
4.4 Langevin 方程式
第5章 マルチスケール相平衡・相転移
5.1 固溶体のエネルギー
5.2 緩和エネルギーのKhachaturyan 理論
5.2.1 離散格子上の固溶体形成と連続体中の整合析出
5.2.2 一様変位と均一変形
5.2.3 局所変位と不均一変形
5.3 スケールをつなぐもの
第6章 材料強度の発現
6.1 転位に働く力
6.2 単一転位と単一障害物の相互作用の素過程
6.3 障害物が分散したすべり面上での単一転位の挙動
6.4 動的効果
6.5 多数の転位の集団挙動
Appendix 1 Barker の方法
Appendix 2 自然逐次法(Natural Iteration Method)
Appendix 3 完全微分形と積分因子
Appendix 4 熱弾性効果
Appendix 5 変分法
Appendix 6 Smoluchowski 方程式
Fokker‒Planck 方程式
Appendix 7 応力と歪,弾性エネルギー
Appendix 8 面力,主応力
Appendix 9 刃状転位とらせん転位の周囲の応力場