あらすじ・内容紹介
人間の喜怒哀楽を伝える「共感の装置」として。
7世紀初めの飛鳥時代から8世紀半ばの奈良時代までの130年間の歌、およそ4500首が収められた『万葉集』。天皇や貴族、官僚のほか、防人や東国の農民など庶民の歌も含まれている日本最古の歌集である。
その文学作品としての評価や歴史的価値は高く、意義は深い。しかし、今回はそこではなく、コミュニケーションとしての歌の存在や役割に焦点をあてて解説。
万葉の時代の人びとは、四季の自然の美しさ、恋心、寂しさや笑いなど、様々な思いを歌で交換し、共有しながら暮らしていた。そして文字が普及すると、人びとはアルバムのように家ごとに歌集を作り、思いを記憶に留めようとした。『万葉集』の編纂者である大伴家持は、それらを集めて年代やテーマごとに分類、大部の歌集にしたのだった。収められた歌は、もともと口承で歌い継がれてきたもの。つまり、人と人とをつなぐコミュニケーションツールという側面を持っており、そこには現代の「写メ」やSNSと共通する特徴を見て取ることができるのだ。
番組とテキストでは、古代の人びとが歌でどのようなコミュニケーションをとっていたかを、それぞれの歌が詠まれた場所や状況、歌を送る相手との関係など、個別の在りようを具体的に見ていきながら、そこに込めた思いをいまの感覚をもって探ってゆく。綴られた心情や感性を明らかにしながら、スマホで育った世代とも変わらない、日本人ならではの表現の面白さを見出してゆく。